ドリップポット(ランブルポット)

1.
初めて、銀座カフェドランブルに行ったとき、
(上京したての、18歳!でした。)
相当にいろいろなカルチャーショックを受けたのですが
なんと言っても一番驚いたのは、
あのポットの先から、ネルの上に吸い込まれてゆく
糸のようなお湯の流れでした。
これには驚きました。

まるでポットの先から銀のネックレスチェーンを真っすぐに垂らしたような
キラキラとして、きれいな、安定した細い差し口!!



2.
ランブルでのデミタスのドリップのあらましを見てみましょう。

まず、沸騰したホーローのポットを、コンロから下し、
温度を確かめるように、ポットのふちを指でちょんちょんと触りながら
沸騰が冷めて落ち着くのを待ちます。

次に、やおらポットを持ち上げ、脇を締めてミゾオチのあたりで、
一定の角度を保つようにポットを右手で固定してしまうのです。

そして、静かに一滴、湯を落とします。
点滴の始まりです。
ひとしずくづつの湯が染み込んで、
コーヒーの粉の中心で10円玉くらいの大きさに成ってくると
今度は、左手で持っているネルの方を、小さく静かに、水平に回し始めます。
(ポットは固定しネルの方を回すドリップを、とんきちが初めて見た瞬間です。)

ネルを回す左手の動きに合わせるように、
固定しながらも、微妙に右手のポットを操作しているらしく
次第に点滴の間隔はせばまり、最後には湯が細い一本の線となり
ツツッーっと、一定の量がコーヒーの粉の中に吸い込まれて行くのです。

このときネルの中には、液体の量が増え続けているはずなのですが
まだ外側のどこにも、コーヒー液は、しみ出してはいません。
粉は湯を吸い込み、少しずつ膨らんできているのですが
泡が表面に浮き上がって来る事もないのです。
コーヒーの粉は、撹拌される事はなく、
徐々に増えていく湯の中で、原液が濃縮されている様に見えます。

注湯が途切れる事はありません。
ネルも回され続けています。

真っすぐな白い湯の糸は、胸の下あたりからヘソ位の高さに注がれ
濡れたコーヒーの粉の上で、くるくる回り、円を描き
やがて中のコーヒー液は増えて、重くなり、
ネルの側面から下方にかけて
少しずつ赤暗いコーヒー液が外の起毛ににじみ出し始めると
最後には耐えきれないように、
ポツリと。
最初の一滴が、銅製の小さなミルクパンの上に落ちてゆくのです。

(その一滴は、
 あくまで黒く、あくまで香り高く、
 濃厚なコーヒーエキスでなければ成りません。)

その後二滴、三滴とコーヒー液の落下の間隔が狭まり、
やがて一本の糸のようになり、
ネルの底の一点から、抽出された液が、乱れなく落ちてゆきます。

一方、上から継ぎ足されている湯もあくまでも一定で、一本の糸の様ですから、
上からの透明な糸と、
下への琥珀色の糸が、
ネルを挟んで同時に、同量、流れている様子で
何とも不思議な感じさえ受けるのでした。

液の色が薄くなり始め、十分に抽出されたと見ると、
最後は抽出不足の所に太いお湯をちょんちょんと注ぎ足したり
真ん中にザっと太い湯を注いだりして調整しています。

片手鍋の中のコーヒーが一定量に達すると
サッと。
ドリッパーはわきによけられ、流しに投げ捨てられ
(この瞬間がカッコいい! 「静」から「動」にかわる一瞬!!)
そして、何事もなかったかのように、
銅製のサーバーの中には、透明なコーヒー液だけが
静かに残されているのです。

スプーンを使い、浮いている二三のあわ粒がよけられ
カップに抽出液がサーブされます。

正確な時を刻みながら行われる一連の流れは、
まるでドラマを見ているような、深い感動をもたらします。
そしてそれを、さも日常の、とるに足りない事のように
次のコーヒーも、そして次のコーヒーも
平然と、かつ機械的に行っている人が
カウンターの中に静かに立っているのでした。

そのカッコ良さに、とんきちすっかり魅了されてしまいました。
(なんせ18才ですから。影響されやすいんです)


3.
その後、何度かランブルに通っているうちにわかった事は
なんと、あの、魔法のポットが、レジの所で買えるらしいと言う事でした。
早速、勇んで、ポットを買い入れたのです。

一緒にランブル通いをしていた同郷の相棒は、
紺色の、店で使っているのと同じ大きさのポットを買いました。
とんきちは、赤い色の小さな方のポットを買いました。

それが、これです。
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どうして糸のような湯が出せるかと言うと
湯口の先端の形状によるわけです。
下唇が長く、少しずつ細くなり、先端は少しだけ下向きにめくれているため
湯切れがよく、ぴたっと止まります。
(下にダラダタ垂れません。)
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コンロに直接かけると、藤で編んだグリップの下の部分に
火が回り込んで、燃えてしまうのです。
それでこんな風になってしまいました。
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その後も何度かマイナーチェンジをしながらポットが売り出されている様ですので、
気になった時は買うようにはしているのです。

これは、取っ手に藤が巻かれていないタイプのものです。
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ランブルのロゴもシールにかわり、はがせばどんな店でも使えるように成っています。

これは、最近出たステンレス製のものです。
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取っ手には、藤の編み込みが巻かれているのですが、
今度は炎返しの板がついています。

これはサザコーヒーに行ったとき、記念に買ったものです。
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ランブルのより、下唇が大きく下に反っているような感じがします。

カリタのこんなのも買ってみましたが
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結局は、ほとんど使わず、飾り物になってしまいました。
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4.
はじめてポットを買った日から、
今度は、とんきち、練習です。
あのような安定した糸を垂らすために
来る日も、何度も、練習です。
朝おきて、モーニングコーヒーを入れようとすると
湯の線がうまく出せません。
練習です。
パジャマのまんま、朝っぱらから、流しの前で
ポットで水を何度も垂らしているわけです。
(なんか、取り憑かれたような感じ。笑っちゃいますよね。)
(でもその時は真剣。)
先の形が気に食わないので、今度は金槌で先っぽをたたいてつぶします。
そんな事をしているから、ホーローがはがれてさびてしまいました。
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玄関先でカンカンやっている所を、同じ下宿の連中に見つかって、笑われたのを今でも覚えています。




そうして、はじめてポットを買ってから、ズーッと。
(20数年間)
今でも愛用のポットは、この一本になっているのでした。

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by tonnkiti2002 | 2005-11-20 15:21 | 道具


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